「なぜ人は辞めるのか?」― 鳥取県100人調査から読み解く、年代別“転職理由”とエンゲージメント戦略

はじめに:地方企業こそ問われる「定着率」の本質
採用活動が難航する昨今、特に地方企業では「せっかく採用しても定着しない」「若手がすぐ辞めてしまう」といった悩みが経営課題になっています。求人媒体を増やしたり、給与条件を改善したりといった取り組みを行っても、そもそも「なぜ辞めたいのか?」という根本の理由を理解していなければ、本質的な改善にはつながりません。
こうした課題意識のもと、今回私たちは鳥取県在住の100名を対象にしたアンケート調査を実施しました。テーマは「転職理由」。その回答を世代別に分析することで、各年代が職場に求めるもの・離職を考える背景が浮かび上がってきました。
結果は非常に示唆に富んでおり、企業の人事担当者や経営者が「自社で何を見直すべきか?」を考えるヒントとなるでしょう。
今回、2025年6月に実施したアンケート(対象:鳥取県在住の20代~50代の社会人100名)から、「転職理由」とその年代差を調査・分析しました。
データ紹介:「転職理由 × 年代」鳥取県民100人の本音とは?
アンケートでは、以下の7つの項目を「転職したい理由」として複数選択方式で提示しました:
- 給与が低い
- 人間関係が悪い
- 労働時間が長い
- キャリアアップしたい
- 仕事内容に不満
- 通勤が不便
- 評価が不公平
この回答を20代/30代/40代以上の3つの年代に分類して集計したところ、各世代の“転職のきっかけ”に明確な違いがあることが分かりました。単に待遇面の不満だけではなく、「世代ごとの価値観」や「生活フェーズ」によって、重視されるポイントが異なっていたのです。

分析:世代ごとに違う“辞めたくなる理由”のリアル
🔹20代:「キャリアの見通し」と「働き方の柔軟性」がカギ
20代は、将来への不安やキャリアの停滞感に敏感で、「キャリアアップしたい」「労働時間が長い」といった声が目立ちました。
「この会社で成長できるのか?」「自分らしい働き方ができるのか?」という問いを常に抱えている世代です。
中には、「副業ができない」「転勤が多くて生活が落ち着かない」といった柔軟性の欠如が離職動機につながるケースも。企業側がキャリア支援や選べる働き方を提示できるかが、エンゲージメント維持の分かれ目になります。
🔹30代:「経済的安定」と「人間関係の質」が決め手
30代になると、家族を持ったりローンを組んだりと、生活基盤の安定がより重要になります。そのため「給与が低い」や「人間関係が悪い」といった理由が特に多くなります。
特に注目したいのは人間関係です。「上司と相性が悪い」「職場の雰囲気がギスギスしている」「評価が不透明で納得感がない」といった職場環境への不満が、定着を阻む要因となっています。
つまりこの世代には、給与や制度の改善に加え、「働きやすさ」や「信頼できるチーム作り」が不可欠です。
🔹40代以上:「信頼と実感」がなければ離職を考える
40代以上の中堅・ベテラン層では、「評価が不公平」「仕事内容に納得できない」といった“働きの報われなさ”が離職理由として挙がります。
長く勤めてきたからこそ、「この会社は自分のことをどう見ているのか?」という問いに対する答えが見えないと、不信感や閉塞感に繋がります。「自分の経験をどう活かせるのか」「このまま何年も同じことの繰り返しでいいのか」――そんな葛藤を抱えていることが読み取れます。
実践へ:世代別エンゲージメント施策のヒント
このデータから導き出せるのは、画一的な人事制度では世代間の期待に応えられないということです。それぞれの世代に対して、以下のようなアプローチが求められます:
世代 | エンゲージメント向上のヒント |
---|---|
20代 | キャリアパスの提示/柔軟な働き方(フレックスタイム・リモート)/成長機会の可視化 |
30代 | 公平な評価制度の導入/上司との1on1ミーティング/家庭事情に寄り添う制度 |
40代以上 | スキル・経験の承認/中堅としての役割の明確化/経営層との対話の場づくり |
企業文化や業務内容はすぐに変えられなくても、“関わり方”は今日からでも変えられる。この視点が、今後の採用・定着施策を大きく左右します。
まとめ:「辞めたい理由」から見える、“選ばれる会社”の条件
鳥取県民100人の声から見えてきたのは、「辞めたい理由」は人それぞれであり、年代によっても大きく異なるというシンプルな真実です。
つまり、企業が「採用したい人材像」を語るだけでなく、**「今いる社員がなぜ不満を感じるのか」**を知ることで、本質的な人材戦略を描けるようになります。
特に地方では「仕事があっても人が定着しない」という問題がより顕著です。だからこそ、辞めたい理由に正面から向き合うことが、“選ばれる会社”になるための第一歩です。
最後に:御社の社員は、なぜ辞めたいと感じているのでしょうか?
この調査を、ぜひ自社の“働きやすさ”を見直すきっかけにしてみてください。
社員の声に耳を傾け、世代ごとに違う「働く理由」に応える職場づくりが、地域に根ざした企業の未来を支えていきます。